高梨沙羅のスーツ失格:謝罪に感じる国民性

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北京五輪で高梨沙羅を襲った不運

北京の冬季五輪が終了して、約1週間。

今回も、さまざまな競技で悲喜こもごものドラマが展開されましたね。

スキージャンプでは、男子ノーマルヒル個人での小林陵侑選手の金メダルなど、日本人選手の活躍が随所に見られました。

そんな中、多くの視聴者が心を痛めたのが、「混合団体で高梨沙羅選手を襲った不運」ではないでしょうか。

今回はこの出来事に焦点を当て、英文記事と英文Tweetを交えて振り返っていきます。

高梨沙羅が「スーツ規定違反」で失格

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北京五輪の新種目である「スキージャンプ混合団体」。

これに出場した高梨選手は、1回目に103メートルの大ジャンプを飛び、日本チームに勢いをつけたかに思われました。

が、その後、「スーツの両太ももが規定より2センチ太かった」と判定され、彼女の1回目の得点が無効となります。

この影響もあり、日本チームは最終的に惜しくもメダルを逃し、4位という成績に終わりました。

CNNの英文記事は、FIS(国際スキー連盟)が定めたガイドラインを、次のように説明しています。

Sara Takanashi: Japanese ski jumper apologizes amid ‘too big’ suit disqualification controversy

According to the FIS guidelines: “An athlete may only take part in a FIS Competition with equipment which conforms to the FIS regulations.

「選手は、国際スキー連盟の規定に沿ったスーツを着用した場合のみ、競技に参加できる」というわけですね。

※この種目で、合計4カ国の5選手が同様の「スーツの規定違反」で失格となっています。

「皆の人生を変えてしまった」と高梨はインスタで謝罪

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競技終了後、高梨選手がインスタグラムに投稿した謝罪文が波紋を呼びました。

彼女のインスタ投稿は、CNNの記事で次のように英訳されています。

Sara Takanashi: Japanese ski jumper apologizes amid ‘too big’ suit disqualification controversy

“I am very sorry that the chance of winning a medal has been taken away from the Japanese team,” said Takanashi in an heartfelt message on Instagram.

“It is an undeniable fact that my disqualification changed everyone’s lives. Even if I apologize the medal will not be returned.”

「(自分のスーツ規定違反が)メダルのチャンスを奪ってしまった」

「失格になったせいで、みんなの人生を変えてしまった」

「私が謝罪してもメダルは戻ってこない」

と、ひたすら反省して詫びる内容は、読んでいて本当につらくなります。

What did she do to deserve this? (こんな目に遭うなんて、彼女が何をしたというのか)

こんなふうに、彼女を気の毒に感じた人が多いのではないでしょうか。

個人ノーマルヒルと同じスーツで失格になるとは、本人も予想外だったのでは?

五輪の大舞台で失格処分になった高梨選手は、私の目には、むしろ「被害者」のように映ります。

きっと世界中から、次のような「pep talk(激励の言葉)」が届いていることでしょう。

Come on Sara, you didn’t do anything wrong! We are always behind you. (沙羅さんは何も悪くないよ!いつも応援してるからね)

それにしても、4年間の努力の結果が「複雑な規定による失格」だなんて、残酷すぎて言葉もありません。

失格処分に猛抗議したドイツのアルトハウス選手

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個人ノーマルヒルで銀メダルのカタリナ・アルトハウス選手


いっぽう、高梨選手と同様、混合団体で「スーツ規定違反」で失格となった、ドイツのカタリナ・アルトハウス選手の反応はこうでした。

先ほどのCNNの英文記事です。

While Takanashi apologized, Germany’s Althaus, who won a silver medal in the individual event, was more critical of her disqualification.

“We were looking forward to the second (women’s) competition at the Olympics. FIS destroyed that with this action — they destroyed women’s ski jumping,” Althaus told Reuters.

“I have been checked so many times in 11 years of ski jumping, and I have never been disqualified once. I know my suit was compliant.”

「今回の五輪で(女子の)新しい種目ができて、とても楽しみにしていたのに、FISがこの行為で台無しにした」

「11年の競技生活で何度もチェックを受けたけど、スーツで失格になったことは一度もない。私のスーツは規定にしたがっている」

と、率直な感情を表すとともに、明確に論点を主張しています。

国民性なのかもしれませんが、「自分を責めて謝罪した日本の高梨選手」とは対照的な言動です。

沙羅さんを思うと胸が張り裂けそう:ファンのTweet

失意に沈む高梨沙羅選手に対し、世界じゅうのファンから温かい言葉が寄せられています。

たとえチームの期待を裏切る意図はなかったにしても(even though it wasn’t intentional to let the team down深く頭を下げて謝罪し(how she apologised with a deep bow反省を示すshow remorseのは日本文化の素晴らしさ」

apologiseはイギリス英語の綴り。アメリカ英語は「apologize

高梨沙羅選手と日本チームを思うと、胸が張り裂けそうHeartbroken for Sara Takanashi and Japan)

黄色マーカーをつけた語句が、今回の出来事を描写する主なキーワードです。

unfortunate(運が悪い)」という形容詞もぴったり当てはまりますね。

普段の実力を発揮できていない、という意味で次の表現も使えそうです。

Things haven’t been going well for her at the Olympics.(彼女は、五輪ではどうもうまくいってない。)

まさに、高梨選手は毎回のオリンピックでツキに見放されている感じです。

今後を考えるのはまだ気が早いものの、なんとか挽回の機会を持ってほしいところです。

全日本スキー連盟が意見書を提出する方針

高梨選手と日本チームが、今回の失格に納得しているなら仕方ないのですが、こんな気になる報道も出ています。

全日本スキー連盟の聞き取りに対し、高梨選手が「The suit check procedure was different than usual.(スーツの測り方が今までとは違っていた)」と回答していたそうです。

本人は「その場で測り直しを求めたが、聞き入れてもらえなかった」とも。このあたり、なんだかモヤモヤしますね。もっと強く主張できなかったのでしょうか。

そもそも、「特定の選手だけを選ぶ抜き打ち検査」というやり方に不公平感があります。

これを受けた全日本スキー連盟は、国際スキー連盟に対して「検査のあり方」などの意見書を提出する方針、とのこと(※2月11日時点の報道に基づく)。

一応、不問に付す形ではないようなので、これを機会に、ルールの整備と透明化を強く要望してもらいたいです。

次の冬季五輪を目指すかどうかはさておき、高梨選手が、また笑顔で晴れ舞台に戻ってくることを心から祈っています。

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高梨沙羅のスーツ失格:謝罪に感じる国民性”へ2件のコメント

  1. musa より:

    It was really unfair for the FIS to do the suit checks on a random basis and let the athletes know the results that they were disqualified after their performances. If the FIS claims that they guarantee fairness, they should have given the athletes whose suites were checked to be disqualified a chance to change their suits before their performances.

    When I read the apologetic tweet by Takanashi, I felt her reaction was very Japanese-minded. If she had not apologized, she might have been criticized saying it was her fault that the team lost the chance of getting the medal.

    I really wish she will overcome this hardship and bounce back as a greater ski jumper again. You can do it, Sara!

  2. Kuni より:

    It was too sad to see heart-struck Sara. Truly, she didn’t do anything wrong!! However, why JOC and SAJ didn’t make protest against FIS?

    The suit check procedure was really incomprehensible. Such as taking off her underwear and measuring. The thickness was 2 mm. Moreover, a puzzling thing was there were two men there except a female measurer. I wonder something mysterious power has worked?

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