スポーツ界のロシア排除は良識なのか

ロシアとウクライナの紛争が泥沼化する中、世界じゅうのスポーツ界に深刻な影響が出ています。

今回の学習コラムは、「国際スポーツからのロシア排除」をテーマにお届けします。

最初に、「USA Today」の英文記事をごらんください。

次回の通訳式英語ニュースは、この記事の前半(「Russian players won both last year and are already qualified for this year’s finals as defending champions.」まで)を土台に作成します。

また、対訳ではありませんが、日本語で同じテーマを扱った記事はこちらです。

さて、ここからは、この英文記事(前半)の主要部分を読み解いていきます。

国際オリンピック委員会がロシアの参加禁止を呼びかけ

まず、記事から冒頭の3段落を引用しました。この部分を読むと、全体の骨子がわかります。

また、英文読解の参考となるよう「語句の解釈」「和訳例」「ミニ解説」を追加しています。

More and more sports are following the appeal of the International Olympic Committee and banning Russian athletes from competing in the wake of the country’s invasion of Ukraine.

語句の注釈)ban(動)禁止する, in the wake of:〜を受けて

和訳例) ロシアのウクライナ侵攻を受け、国際オリンピック委員会の要請にしたがう形で、ロシア人選手の国際大会への参加を禁止するスポーツが増えている。

ミニ解説)「the country」は「Russia」を指しています。英文記事のタイトルと前述の「Russian」から国名が明らかなので、別の単語に置き換えています。

Russia was barred from competing in international ice skating, skiing, basketball, track, and some tennis events Tuesday, a day after being kicked out of soccer competitions and hockey – Vladimir Putin’s favorite team sport.

語句の注釈)bar(動)禁止する

和訳例)ロシアは火曜日に、国際アイススケート、スキー、バスケットボール、陸上、一部のテニス大会への出場を禁止された。これは、サッカーとホッケー(ウラジミール・プーチン氏のお気に入りのスポーツ)で、ロシアが追放された翌日だった。

ミニ解説)「a day after being kicked …」は、主語を補うと「a day after it was kicked …」となります。「it」=「Russia」です。

「a day after A(=Aの1日後に)」という表現です。「a day 」「after」という語順に注意しましょう。

The decisions follow the IOC’s request to international sports federations to keep Russian athletes out of events they organize.

和訳例)この決定は、国際競技連盟の企画する大会からロシア人選手を締め出すように、という国際オリンピック委員会の要請にしたがうものである。

ミニ解説)IOCは、前述の「the International Olympic Committee」の頭文字を取った略語です。


先日、北京パラリンピックでロシアとベラルーシの選手が除外されたのも、この流れに沿った措置ですね。

「選手村の雰囲気が悪くなり、出場する選手たちから除外の要望があった」と聞いて、前代未聞の事態に衝撃を受けました。

次に、競技ごとの対応を「スケート」と「テニス」を例に具体的に見ていきましょう。

国際スケート連盟の対応

The International Skating Union, the body that runs the sport around the world, said no athletes from Russia or Belarus “shall be invited or allowed to participate” in events until further notice.

和訳例)世界のスケート競技の組織機関である国際スケート連盟は、当面の間、ロシアとベラルーシの選手が大会への「参加を依頼・許可されないものとする」と述べた。

ミニ解説)「until further notice(追って通知があるまで)」を「当面の間」と意訳しています。


目下、女子フィギュア界を席巻しているロシアの選手たちが世界選手権を欠場することになり、「主役不在で開催する意義」」を疑問視する声も出ています。

確かに、純粋なスケートファンとしてはがっかりでしょう。選手たちが、自国の政治に巻き込まれる形となりました。

国際テニス団体の対応

Russian and Belarusian tennis players including top-ranked Daniil Medvedev, who is Russian, will still be allowed to play on the ATP and WTA tours, but without national flags, and at the Grand Slams.

語句の注釈)the ATP and WTA tours:男子・女子のプロテニス協会が主催する世界トップのツアー, the Grand Slam:四大大会(全豪・全仏・ウィンブルドン・全米)

和訳例)世界ランク1位のロシア人選手、ダニール・メドベージェフを含むロシアとベラルーシの選手は、国旗(国名)を使用しない条件で、現時点ではATPとWTAのツアー、四大大会への参加を認められている。

ミニ解説)「without national flags(国旗なしで)」とは、ロシアとベラルーシ出身の選手たちが「自国の国旗と国名を使用しないこと」という条件を指しています。


英文記事には、ロシアとベラルーシの選手は「デビスカップなどの、国別対抗戦には出場できない」という記述もあります。

現状を考えると、これはまあ致し方ないでしょう。

ただし、テニスはあくまで個人スポーツですから、「ATP、WTA、四大大会に出場できるかどうか」が選手にとって死活問題です。

いっぽう、これらの国際的な動きに対するロシア側の反応はどうでしょうか。

ロシア連邦副首相の反応

以下は、ロシア連邦の副首相「Dmitry Chernyshenko(ドミトリー・チェルニシェンコ)氏」の発言の引用です。

“Our country has always adhered to the principle that sport is beyond politics, but we are constantly drawn into the politics, because they understand the importance of sport in the lives of our Russian people,”

語句の注釈)adhere to:〜を忠実に守る

和訳例)我が国は、スポーツが政治の外にあるという立場を守ってきたが、絶えず政治に引きずり込まれる。それは、ロシア人の生活でスポーツが重要である、とみんながわかっているからだ。


こういう主張を聞くと、”Which country started the invasion? (侵攻を始めたのはどの国なんだよ)”と聞き返したくなりますね…。

ロシア人選手の排除を支持する?しない?

以上、「国際スポーツからのロシアとベラルーシの選手締め出し」について、USA Todayの記事前半を解説しました。

次回の通訳式英語ニュースでは、この英文記事(前半)の要約をお届けする予定です。

それに先立って、この機会にぜひ、真剣に考えてほしいことがあります。

もし次のように質問されたら、あなたはどのように回答しますか。

Q) Do you support the decisions to exclude Russian athletes from international competitions? (ロシア人選手を国際大会から締め出す決定を支持しますか)

答え方に正解・不正解はなく、競技によっても状況が異なってくると思います。

もしよろしければ、コメント欄にご意見をお寄せください。

私の場合はテニス観戦が趣味なので、テニスについては明快に回答できます。

それに関して、次回以降の学習コラムで詳しくお伝えしていきますね。

世界のスポーツ選手を含む善良な人々が、この紛争から1日も早く解放されますように…。

関連記事

ラケットを置いて銃を取った元テニス選手

Topicに関する感想・意見のコメントを募集中!

このTopicについて、あなたの感想や意見をコメント欄にぜひ投稿してください。英文でも日本語でもOKです。

※英文のみはスパム判定される場合があるため、日本語のメッセージを簡単に添えていただけると助かります。

※この記事がお役に立ちましたら、ぜひSNSでシェアをお願いします。

※スパム防止のため、コメントは承認制となります。順次公開しますので、しばらくお待ちください。

【中級レベルを今度こそ脱却したいあなたへ!】

英語ニュースを正確にリスニングしたい方、中級から上級へ確実にレベルアップしたい方、メルマガの「穴埋めリスニングQuiz企画」に無料で参加しませんか。

ディクテーションとは、「英文を見ずに音声を聞いて、正確に書き取る訓練方法」です。

火曜15時の〆切までにQuiz答案を提出した方を対象に無料採点をおこない、不正解箇所から、リスニングや語彙・文法などの弱点を特定します!

穴埋めリスニングのディクテーション企画

2 thoughts on “スポーツ界のロシア排除は良識なのか

  1. コリー より:

    It is true that sports are nothing to do with wars, but I support this decision. Because now that dozens of women and children have been killed in Ukraine, the democratic world must take every action immediately to make Russian people know that Putin’s justifications for war are false. Even wars have rules(Refer to article by ICRC on March 7). I hope as many Russians as possible will understand the real cause of the ban and speak out without yielding to the authority.

    スポーツ界のことは全くわからないため、予断を許さぬ現在の状況からやむを得ない決断と思って考えをまとめました。赤十字国際委員会の記事中の『印象的な表現『戦争にもルールがある』を引用しました。

  2. Misha より:

    It’s hard to say if I support the decisions or not. While I believe playing sports should have nothing to do with wars and conflicts, the reality is that it is closely related to the global economy and politics. You can’t separate it from them. Isolating Russia in any way possible seems to be the best way to end its invasion of Ukraine before more and more people get hurt and lose their lives. So well, I guess I have to say I support the decisions, for now.

    ロシア選手を締め出すことがどれだけクレムリンへのダメージになるのかわかりませんが、一日でも早くこの戦争が終わることを心から願っています。生きてさえいればスポーツはまたできるのですから。

この投稿はコメントできません。